廃人・・・

昨日電車の中で偶然会った友達に
昔の友人の近況を聞いた。
その内容は衝撃的だった。

15年位前によく遊んでた、
とあるお店のゲイダンサーだった彼らは
某国から出稼ぎに来ていて、
今で言うニューハーフ等の前身として
ショーパブやショータイム付きのディスコとかに
あちこちで出演していた。
そう言った子達と仲良くなって、
オフによく一緒に遊んだりしていた。
中にはその子達と結婚した友達もいる。

その中でも一際綺麗でダンスも巧く、
その界隈では人気者だった子が
麻薬中毒患者になったという。
最初はギャラの交渉がうまく行かず
気分転換にマリファナに手を出したらしい。
そしてLSDや覚醒剤にも手を出したそうだ。
今では昔の面影はなくなって、
錯乱も酷く、親の顔も判らないほどだそうだ。

もう一人仲が良かった子の消息も聞いた。
なんとその子は自殺していた。
数年前、やはりその子の仲間の一人も
ピストルで頭を撃って自殺をしていたが、
いったい彼らをそこまで追い詰めたのは
なんだったんだろう…

別れ際、友人が言った。
「私達が彼らを甘やかしすぎたんだな…」
多分…そうかもしれない。

初めて日本に来た頃の初々しい彼らが
昨日のように思い出される。
暫くすると彼らは同じように口を揃えて言った。
「私達は国に帰ればただの貧乏人のゲイだけど、
日本に来るとスーパースターの様にお客さんに
チヤホヤしてもらえる。だから日本は好き。」
「日本人はどうしてこんなに人にプレゼントするのが好きなの？
ちょっと欲しいと言うとなんでも買ってくれる。
自分の国ではクリスマスや誕生日ぐらいしか
プレゼントなんてもらえないよ。
プレゼントは嬉しい。でも日本人って変。」
それは君達が人気者だからだよ…
時はバブル全盛期だった。

彼らの国はクリスチャンが多く、
ゲイに対してとても厳しい。
下手をすると人間扱いもされない。
一流ホテルなどは出入りもさせてもらえない。
日本のゲイのようにエンターティナーとしては
絶対に見てもらえないのだ。
日本と祖国を行き来する度、そのギャップに
悩んでいる子は何人もいた。
そういった事も一つの要因なのだろうと思う。

あの頃の色々な出来事を思い出して、
現実の厳しさに打ち勝てるだけのファイトを
彼らに培ってあげられなかった自分が
とても悔やまれて、ブルーになった。